「お年玉」って何?

 

正月のお祝いにおくる、お金や品物のことだよ。

年の初めに賜る(いただくという意味)ものから、お年玉になったといわれているんだ。

 

(くもんなぜなぜカレンダー2020/01/03より)

 

もうちょっと深堀してみよう。

 

 

諸説ある「お年玉の歴史」

 

日本はもともと神道の国。

お正月には、それぞれの家に神様がやってくると信じられていた。

門松、しめ縄、鏡餅、羽子板や破魔矢などの飾りつけやお供え物は、正月に我が家を訪れてくれる神様のため。

そうして正月に家を訪れた歳神様は、もてなしのお礼として、その家の人たちに「新しい魂」を与えた。
こうして神様からもらった新しい魂を「御歳魂」と呼ぶ、というのが一説。

 

あるいは、正月に歳神を迎えるために供えた丸い鏡餅(=歳神の霊魂が宿った依り代)が、歳神が帰る松の明けに「お下がり」として、年神の代理人としての家長から家族や奉公人に分け与えられ、その一年の健康と豊作にあやかれるとされていた。

その餅が「御歳魂(おとしだま)」と呼ばれたことから、とする説。

 

また、これを年のありがたい賜物であるとして「年賜(としだま)」と呼ばれたことから、とする説もある。

 

→歳神(年神)
毎年正月に各家にやってくる来訪神。年末年始に五穀豊穣を祈りまつった神様。

 

→松の明け
松の内は年神が滞在する期間、正月の初めから終わりまで。現在の暦では1月1日から7日が一般的。
明けは7日、年神が帰ると生活も日常に戻る。

 

お餅→お金

 

ではなぜ神様からもらう概念としての魂や依り代である餅からお金に変わっていったのか。

その昔、神様から目に見えないお年玉をもらえるのは家の代表、ほとんどの場合家長である父親だった。

父親は神様からもらった目に見えないお年玉を、希少価値のある餅や記念品、おもちゃなど目に見える形として子供たちに分け与えた、ことが現在のお年玉のそもそものはじまりとされる。

時代が流れ経済成長とともに農村社会が解体され都市生活者が爆増し、米や餅を作らなくなった代わりにお金を分け与えるようになった。

あるいは、それぞれの家庭で餅をついて歳神さまへそなえること自体が徐々に減少し、手軽に準備できるお金に変わっていった。

 

この場合、お金が鏡餅と同じ機能を果たしている。

稲が昨年の収入、鏡餅が家産の集合体、お年玉(=砕いた鏡餅の断片)が家産からの財産分与、というふうにも考えられる。

 

お年玉のマナー

 

目上の者が目下の者に贈るのが特徴。

目下の者が目上の者に贈る場合はお年賀という。

目上の人の子供に対しても言えることで、お年玉は本来NG。

もし渡したいのであれば現金以外のものがベター。

 

ポチ袋に入れる

表に渡す相手の名前を書き、裏に自分の名前を書くのが一般的。

ボチ袋がない場合は封筒や紙、ティッシュ等に包んで。むき出しはNG。

新札の紙幣を用意する、硬貨もできるだけ綺麗なものを

札の折り方は肖像を内側に左から右に三つ折り。

硬貨は製造年月が書いてある裏側を下にしてポチ袋に入れる。

忌み数を避けて

4のつく400円や4,000円、9のつく900円や9,000円などは避けた方が無難。

喪中の相手には渡しちゃダメ

90日間と言われている。時期をずらすか、表記をお小遣い等に変えて。

 

→ポチ袋
ポチ袋とは、小さな祝儀袋の通称。お年玉だけでなく、大入り袋や、旅館などで心付けを渡すときなどに使われる。
ポチ袋の「ポチ」は、「点、小さいもの、少しだけ」という意味の関西地方の方言に由来する。少しばかりの心遣いを小袋にしたためた「これっぽち」という控えめな気持ちが「ぽち」になったと言われている。

 

→祝儀袋と何が違うの?
ポチ袋…こころばかりのお金を畳んで袋に入れる。1万円くらいまでが目安とされている。
祝儀袋…お祝い金を包む。中のお札は畳まない。中袋と表とに分かれている。目上の方へでも失礼にあたらない。

 

海外のお年玉事情

 

海外諸国はどうなのか。

アジアは似たような風習のある国が多いが、キリスト教圏はクリスマスを盛大に祝うため、新年を格別祝って何かを贈ったりすることはない様子。

 

中国

年始に大人が子供に金銭などを与えることで、子供を襲う祟りが抑えられ、その一年を平穏無事に過ごせる、という、日本で言うお年玉にあたるものが「圧歳銭」。

中国や台湾、香港では、結婚式や誕生日、出産のお祝い、旧正月のお祝い等おめでたい行事の際に、赤いポチ袋にお金を入れて渡す慣習がある。

この赤いポチ袋は紅包(ホンバオ)という名。

また社長から従業員へ贈る風習もある。

 

→旧正月
旧暦のお正月のこと。春節。日付は毎年異なる。2023年の場合、1月22日が旧正月だった。

 

ベトナム

中国の影響を強く受けているため、中国に似たお年玉文化を持っている。

ベトナムでは「テト」と呼ばれる旧正月に、赤いポチ袋にお金を入れてお年玉を渡す。

中国同様、社長が従業員にお金を渡すという、大人から大人へのお年玉もよく見られる。

 

→テト
旧暦の旧正月で中国でいう春節にあたる。日付は毎年異なり、政府からテト休暇の発表がある。労働法でテト休暇は5連休という定めがある。

 

韓国

1月1日よりも旧正月を盛大にお祝いする傾向にあり、お年玉も旧正月に渡す。韓国のお年玉は、セベットンと呼ばれている。お金はポチ袋などに入れずにそのまま相手に渡すのが一般的。

「お年玉は目上の人から渡すもの」という考えが根強く、韓国では歳拝金というが、年が上の者に対し土下座等の服従行為をする事を前提にお金がもらえる。

 

イタリア

クリスマスから始まった飾り付けが街を彩る最後の日が1月6日。イタリアでは国民の休日。

この日の夜にベファーナと呼ばれる魔女が良い子にプレゼントを与えて、悪い子には靴下に炭を入れる、という微妙にサンタさんみたいな風習がある。

 

インド

ディワリという名の10月末から11月初めに行われる5日間のお祭りが日本の正月にあたる。こちらもインド歴に従って決まるので毎年日付は異なる。

ヒンドゥー教の神話にちなんで近所の女の子たちを招いてお菓子やごちそうをふるまい、更にお小遣いもあげる。これがカンジャクというお年玉にあたるもの。